脳塞栓が心臓が原因で起こる場合の特徴

心原性脳塞栓症

Point
●不整脈が原因で心臓内にできた血栓が脳まで飛んできて詰まる病気
●突然、何の前触れもなく発症して、重症化しやすい
●約半数の人に「出血性梗塞」が見られ、出血性梗塞が起こると症状が重くなる

突然発症して重症化しやすい

脳以外の場所でできた血栓が血流にのって脳の動脈を詰まらせる病気を脳塞栓(そくせん)症といいますが、ほとんどの場合は心臓でできた血栓が発症の原因で、これを心原(しんげん)性脳塞栓症といいます。心臓でできた血栓は、頸動脈などでできる血栓(血小板血栓)とちがって、フィブリンという凝固たんぱくで固められているので、大きくてとけにくいという特徴があります。
流れてきた大きな血栓によって、突然動脈が栓をされたように詰まってしまうため、病巣が一気に広がって重症化しやすく、死亡率も高いという特徴があります。
心原性脳塞栓症は、近年、ほかのタイプの脳塞栓とくらべてかなり増加しており、75歳以上の高齢者ではもっとも多くなっています。

●原因
 心原性脳塞栓症の原因で、もっとも多いのは「心房細動(しんぼうさいどう)」という不整脈です。心原性脳塞栓症の原因の80~90%を占めるといわれます。
 心臓はふつう、電気信号によって規則正しく拍動し、ポンプのように血液を全身に送り出しています。ところが、心房細動が起こると、電気信号が不規則になり、心房がこまかくふるえて心臓がうまく収縮できなくなるため、心房内の血流が停滞してよどみ、血栓(血の固まり)ができやすくなります。心臓でできた血栓は比較的大きなものが多いので、脳の太い血管にも詰まることがあり、詰まると広い範囲の脳細胞が急速に壊死(えし)します。

●起こりやすい場所と大きさ
 特に中大脳動脈などの太い血管で起こりやすく、大脳皮質を含む広範囲に大きな梗塞巣(そう)ができます。

●発症の仕方
 心原性脳塞栓症は、日中の活動時に突然発作が起こり、発症後、急速に症状が悪化する「突発完成型」である点が特徴です。日中に多いのは、血栓は急に体を動かしたときなどにはがれやすいからです。

●主な症状
 心原性脳塞栓症は、意識障害など、ほかのタイプの脳梗塞より重い症状があらわれます。
 中大脳動脈が詰まると、片マヒや感覚障害、意識障害などが起こります。ほかにも、失語、失行、失認、半盲(はんもう)、共同偏視(へんし)(両目が左右どちらかに寄ったままになる)などの症状があらわれることがあります。中大脳動脈全域に梗塞がおよんだ場合は、さらにさまざまな症状があらわれます。また、中大脳動脈から枝分かれした細い血管(穿通枝)が全部詰まると、かなり重度のマヒが残ります。このほか、脳底動脈に血栓が詰まると、脳幹がダメージを受け、いきなり意識をなくして倒れてしまうという重症例が多くなります

●危険因子
心房細動以外では、急性心筋梗塞や心臓弁膜症、心筋症(心臓の筋肉に異常があり、不整脈をまねく)などが主な原因となります。

●そのほかの特徴
 動脈に詰まった血栓が自然にとけて血流が回復すると、虚血によって障害を受けた血管が血圧に耐えられずに出血を起こすことがあります。これを「出血性梗塞」といい、心原性脳塞栓症では約半数の患者さんに見られるといわれます。出血性梗塞を起こすと、しばしば症状が重篤(じゅうとく)となります。

MEMO
心房細動の症状

 心房細動には、一過性で自然におさまってしまう発作性心房細動と、慢性的な心房細動があります。発作的にくり返していた心房細動が慢性的に固定してしまうケースも多く、高齢者では高い頻度で見られます。
 心房細動が起こると、「ドキドキする(動悸がする)」「胸が苦しい」「階段や坂を上るのがきつい」「息が切れやすい」「疲れやすい」などの症状があらわれ、手首や頸部(首)の脈をはかるとふだんより速かったり、または早い、遅いを不規則にくり返したりします。ただし高齢者では自覚症状があまりない場合もあるので注意が必要です。
心房細動が起きているかどうかを確かめる検査は心電図検査です。気になる症状があったら、早めに医療機関を受診しましょう。

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